【前編】自根しか知らないトマト農家!長野県上伊那郡の石川農園

【前編】自根しか知らないトマト農家!長野県上伊那郡の石川農園

らでぃっしゅぼーやの契約農家を紹介するシリーズ。
今回は自根にこだわるトマト農家、石川農園をご紹介します。


 

難しい野菜だから、トマトをつくる

トマト写真

 

自根しか知らないトマト農家

農業には「接ぎ木」という手法があります。異なる2つの特徴を持つ苗、例えば病気に強い苗の根っこにおいしい実をつける苗の芽をつなぎあわせ、病気に強くおいしい実をつける苗をつくり出すのです。接ぎ木によってつくられる野菜はさまざまありますが、そのひとつがトマト。接ぎ木が一般的なため、逆に接ぎ木をせず自らの根で育てたトマトはわざわざ「自根トマト」と呼ばれ、珍重されることも少なくありません。

トマト写真2

 

「私たちは自根しか知らないから違いがわからないんですよ」と語るのは、中央アルプスのすぐふもとにある長野県の宮田村で自根トマトを手がける石川誠さんと祥子さん。誠さんは18年前にサラリーマンから農業の世界へ。内外各地を旅するなかで出会った、まるで水墨画の世界を映したかのような宮田村に惹かれて移住。以来、2人で自根トマトに試行錯誤する日々を、この土地でおくります。

 

「18年やっても失敗ばかり。でも失敗しないとわからないこともありますから」と誠さん。そんな夫を祥子さんは「職人肌な人だから」と笑います。

 

ハウスの中の小さな生態系

石川農園の特徴は自根だけではありません。何をつくろうかと思案していた就農1年目。つくったスイカの出来がよかったにもかかわらず「農薬を使いたくない」という理由でスイカを選択肢から外した誠さん。以来、化学農薬とは無縁の農業です。

 

農薬に頼らない秘訣は、まず病気に負けない強いトマトをつくること。「樹勢の維持には気を遣っています」と誠さん。

 

種から発芽させた苗は生長に合わせて充分なスペースを確保しながら生育。「作物は狭ければ狭い範囲内で育とうとします。それでは苗本来の力は発揮できませんからね」 

そして、病気と並んで脅威となる虫は、同じく虫を持って制す。天敵となる虫を畑に入れ、トマトにとって心地よい生態系をハウス内でつくり出すことで虫の害からトマトを守ります。だからこそ石川農園にとって、ハウスをとりまく環境はなによりも気を使うところ。

 

「ハウス周りの草も下手に刈ると生態系が崩れるのでほどほどで。周りからすれば、手入れが行き届いていないように見えるんでしょうけどね(笑)」

 

生きている農薬?

トマト生産地写真

農薬と言うと化学的な薬品をイメージしがちですが、内容は実にさまざま。そのひとつに「天敵農薬」があります。これは、農薬取締法で農薬として登録された「益虫」や「微生物」のこと。化学物質ではなく、たとえば虫であればハチやダニなどのことです。化学薬品を使わず、農作物にとって都合のいい生態系をつくり出すことで防除するため、環境や農業者にやさしい病害虫対策としても人気です。

 


 

後編では味のこだわりをご紹介します。
次回もお楽しみに。