野菜は新鮮なら美味しい?野菜は「新鮮さ = 美味しさ」とは限らない

野菜は新鮮ならおいしいのでしょうか?
農業のこと、自然のこと、自他共に認めるらでぃっしゅぼーやイチの「農業愛」の持ち主、農産担当の杉山より農業の楽しい裏話をお届けします。
野菜は「新鮮さ = 美味しさ」とは限らない
「新鮮野菜」、「採れたて野菜」など、多くの野菜売り場では、野菜の「新鮮さ」が強調されています。
新鮮さとは、「収穫からあまり時間の経っていない青果物、品質的に畑にいる状態から変化の少ないもの」を指します。
しかし意地悪な言い方をすれば、新鮮さ=おいしさとは限りません。状態のことを指しているに過ぎないのです。
もちろん葉物などにとっては瑞々しい、ビタミンC豊富、など重要な品質の指標ですし、冷蔵輸送・冷蔵技術などが発達していない時代、新鮮さは微生物汚染などに対する「安全性の高さ」を示していたこともあります。
新鮮じゃないから美味しい野菜もある
「新鮮じゃないからおいしい(味が濃い、甘味・旨味が強い)野菜」もあります。収穫後、少し置くことにより食味が増すのが、かぼちゃ、さつまいも、じゃがいも、調理用トマトなどです。
トマトは、多少青い色で収穫しても常温で真っ赤になるまで置いておくことで、リコピンや旨味成分であるグルタミン酸が急増します。
真っ赤になるまで樹にいてもいいのですが、その後の輸送での軟果や、樹の負担にも繋がってしまいます。
かぼちゃなどは、ある温度帯で寝かせる(貯蔵)ことにより、デンプンが麦芽糖に変質し、甘味を増します。
8〜9月の収穫後間もない食味は、粉質でホクホク。でも甘味は控えめ。そこから40〜60日寝かせると、粘質でねっとりしますが、とても甘くなります。デンプンが麦芽糖に変質したためです。
10月中旬〜11月上旬は、粉質と粘質がちょうどよいバランスになり、甘味も強くなってくる頃。今がかぼちゃやさつまいもが最もおいしくなる頃です! たんぱく質とアミノ酸の関係にある肉を寝かせておいしさを増加させるエイジングが注目されていますが、新鮮さとは一見対極にある「寝かせる」「着色を待つ」ことが、野菜の底力をさらに引き出すことがあるのです。
野菜は鮮度がすべてではありません。
野菜選びのポイントの参考にしてください。