幻の和牛赤味肉「たんかく牛」を絶やさないために

幻の和牛赤味肉「たんかく牛」を絶やさないために

最近、赤身肉のおいしさが注目されています。

とはいえ、「おいしい牛肉は?」と問われれば「霜降りの黒毛和牛」という答えが多数派です。赤身肉の代表ともいえる〝たんかく牛〟は、実はうまみ成分がたっぷりで、そのおいしさは折り紙つき。まだまだ馴染みがないかもしれませんが、らでぃっしゅぼーやではこだわりを持ってたんかく牛を扱っています。そのこだわりと、たんかく牛の魅力をお伝えします。

 

 

北十勝ファームを訪ねて

「べー、べー、べー」という呼び声に、ノソノソと集まってくる牛たち。よほど人間に愛されているのか、見知らぬ人を怖がる気配もありません。人なつっこいたんかく牛は、どのように育てられているのでしょう。

 

 

農場や飼育した人がブランドとなる畜産へ

釧路市にある北十勝ファームの「音別農場」。

海を臨むこの牧場は、東京ドーム47個がすっぽりと入る220haもの広さです。北海道の大きさを実感する音別農場から車で約1時間半、足寄にも30 ほどの敷地に放牧場や牛舎があり、代表の上田金穂さんを中心に6名で、2つの牧場にいる580頭のたんかく牛を育てています。

 

「自然交配なので、子牛の7割は春から初夏に生まれます。足寄で誕生して1~2カ月して、草を食べるようになり、雨風にも負けないくらい成長したら、親子で音別に放牧します。海の近くに生えるミネラルが豊富な牧草を食べながら、自然の中でのんびり暮らします」と、上田さん。

 

そして11月に入り、寒くなると足寄の暖かな牛舎へと移動して「里」で暮らします。これが、たんかく牛独自の育て方「夏山冬里」方式。牛らしくいられる飼育法に加え、できる限り非遺伝子組換えの国産飼料を使用し、牛の状況に合わせて独自配合した飼料で育てるなど、牛の健康を考えた飼育を実践。さらに、牛の排泄物は堆肥にしてエサとなる草やデントコーンを育てたり、近隣の農家へ販売したりして循環させ、環境負荷を減らすことにも注力しています。

 

こうした取り組みの根幹となるのが、牛への深い愛情。足寄の牧場内には家畜の神様が祭られています。毎月17日には御供えをし、全員で手を合わせてその月に出荷した牛の供養と、自分たちが牛によって生計を立てていることへの感謝をしています。

 

この仕事に就いたばかりのころは、育った牛を出荷する悲しさに「なんでこんな仕事をしているのか」と思ったこともあったそうです。

 

「今は、肉用牛として生まれた牛たちに、うちで飼われて幸せだったと思ってもらえるよう育てることが自分の役割だと思っています」

 

また、上田さんは新しい取引先に「お客さまが満足しなくても、牛のせいにしないでほしい」と伝えています。

 

「おいしく食べてもらえなかったのは、飼育中の管理の仕方やエサの配合、あるいは屠畜の方法、肉の切り方、料理方法など、どこかで人間が間違えたから。本来、悪い牛などいません。そういうことがないよう、しっかりと育てて、自信を持って出荷しています」

 

現在の畜産は、霜降り肉が高値で取引されることから、たんかく牛の生産は増えず、和牛の総数の1%にも満たないのが現状です。

 

「愛情を持ってていねいに育てるうちのスタッフが、有機たんかく牛の飼育に挑戦していますが、その牛に黒毛よりも価値を見いだしてくれる人も出てきました。〝松阪牛〟や〝神戸牛〟など地名がブランドとなる中、これからは誰がどのように育てたのか、農場や飼育者がブランドになるような仕組みを作ることが必要なんだと思います」

 

今後の取り組みに期待がかかります。

 

 

たんかく牛とは?

ルーツは「南部牛」という、旧南部藩(今の岩手県や青森県、秋田県の一部など)で飼われていた荷役牛。足が短く、ずんぐりむっくりとした体形をしていました。

明治になるとアメリカから入ってきたショートホーン種(短角種)と交配。時代とともに荷役牛の役割がなくなると肉用牛として改良され、1957年に「日本短角種」として登録されました。東北の地で長年育てられる中で、厳しい寒さにも強く、子育てが上手で放牧に適するなど風土に合った牛になりました。

近年では、放牧をすることによって排泄物を堆肥として循環できること、草を食べて育つことから黒毛和牛ほど輸入飼料に依存しなくてすむことなどの観点からも注目されています。

 

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