教えて佐藤水産さん!北海道産の天然鮭がおいしい理由

教えて佐藤水産さん!北海道産の天然鮭がおいしい理由

北海道石狩市で北海道産の天然鮭にこだわり、昔ながらの伝統製法を守り続ける佐藤水産の吉田和章さんに「北海道産の天然鮭がおいしい理由」をうかがいました。

 

北海道の天然物がおいしい理由「塩鮭は”熟成”でおいしくなる」

 

白鮭の水揚げ量は北海道が断然一番です。

鮭漁は川ではなく、北洋から日本に南下してくる群れを沖合で獲りますから、北海道は格好の漁場なのです。
かつては水産商社が函館を基地に大船団を組んで北洋に出て、白鮭や紅鮭を獲っていました。
船に冷蔵施設がなかった時代、獲ったそばから船上で処理し、塩漬けにして保存性を高めました。
これを「沖塩」といいます。
一方、水揚げされた鮭に加工場で塩を施すことを「丘塩」と言います。

 

塩の施し方によって「甘塩」「山漬(辛塩)」「中塩」などいろんな製法・辛さの塩鮭がありますが、いずれも塩で水分を抜く漬物と同じで、時間をかけて発酵・熟成し、旨みが増します。
熟成の過程では、塩によって抜けた身と皮の間の脂身が身にしみ込んでいき、焼くと身の繊維一枚一枚がほろりとほぐれるふっくらやわらかな塩鮭になる。
これが、昔から日本人が食べていた塩鮭なのです。

 

現代の甘塩鮭について想うこと

 

ところが健康のために減塩が推奨されると、甘塩ブームが起こります。

 

実はこれはメーカーにとって都合が良い話でした。
塩で水分を抜くと重量が目減りし、キロいくらで商売するには都合が悪いのです。
だから身に塩水を機械で注入したり、表面だけに塩をして水分が抜けないうちに冷凍してしまう。
近頃の甘塩鮭はこういうものが増えました。
しかし熟成しない鮭は、焼くと身が団子のようにかたまりボソボソするし旨みも少ない。
これらは製法からいっても、本来の甘塩鮭とは別物だと思うのです。

 

「本チャン」が、食べられなくなる!?

 

今年ロシアの議会で、来年1月からの北洋の流し網禁止の法案が可決されました。

日本の漁船は北洋でのサケ・マス漁が事実上できなくなります。ロシアは資源保護のためと言っていますが、ウクライナを巡る政治的な報復とも。日本漁船が漁をできなくなると、沖塩ができなくなります。

 

これは日本の伝統食がひとつなくなるに等しいこと。

 

船上で沖塩をした鮭を「本ちゃん」といいますが、本チャンの鮭が食べられるのも今だけかもしれません。
ぜひ昔ながらの旨みの強い塩鮭も守っていきたいものです。

 

いかがでしたでしょうか。

 

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